治療で髪が抜けてしまう前に、ご自身で育ててきたピンクとブルーの髪を、エクステとして残しました。

「この色を、なくしたくない」
ご依頼のきっかけは、治療による脱毛でした。
時間をかけてブリーチを重ね、根元から毛先へ向かってグラデーションになるように染めた髪。ピンクとブルー、二色を並べて楽しんでいらっしゃったそうです。
治療が始まれば、この髪は抜けてしまう。伸ばし直すことはできても、同じ色をもう一度作るのは簡単ではありません。「記念に残しておきたい」というお気持ちで、切った髪を送ってくださいました。
当工房には医療用ウィッグのご相談が多く届きます。ただ、こうした「なくなる前に形にしておきたい」というご依頼も、ときどきいただきます。かぶるためのものではなく、取っておくためのもの。目的が違うので、作り方も変わります。
届いた髪と、最初に決めたこと
束ねた状態で届いた髪は、長さ40cm前後。ピンク・ブルーそれぞれに、しっかりとした量がありました。
まず決めたのは、色には一切手を加えないことです。
ブリーチを繰り返した髪は、色が抜けやすく、扱ううちに退色することがあります。仕上がりをきれいに見せるなら、染め直すという選択肢もありました。
ただ、このご依頼の目的は「ご自身の髪を残すこと」です。色を入れ直せば、それはもう工房が作った色になってしまいます。毛先に向かって淡くなっていく、この方だけのグラデーション。そこに価値があるのだから、触らないほうがいい。そう判断しました。
抜けにくくするための折り返し
ブリーチとカラーを重ねた髪は、健康な髪にくらべて表面が傷んでいます。エクステの根元部分は髪を折り返して縫い留めますが、傷んだ髪は摩擦が効きにくく、通常の長さで折り返すと、使っているうちに抜けやすくなります。
そこで、折り返しを通常より長めに取りました。根元に留まる部分が増えるぶん、一本一本が抜けにくくなります。
写真の上部、色が濃く見えている部分がそれです。少し厚みがあるように見えますが、これは長持ちさせるための構造です。
糸の色も、髪に合わせました
縫い糸には、ピンクの髪にはピンクの糸、ブルーの髪にはブルーの糸を使いました。
強度には関係のない部分です。白い糸でも黒い糸でも、機能は変わりません。
ただ、手に取ったときに違う色の糸が見えると、そこだけ「作り物」の顔になります。記念に取っておくものなら、そういう部分がないほうがいい。髪をかき分けたときも、端を眺めたときも、ぜんぶ自分の色であってほしい。
言われなければ気づかれないところかもしれません。それでも、合わせました。
仕上がりと、使い方
完成したのは、ピンク・ブルー各1本のエクステです。
| 毛の長さ | 約30cm |
| 幅 | 1.5m |
| 両脇の糸 | 20cmずつ長めに |
| 使用した髪 | お客様の自毛(ピンク・ブルー) |
幅を1.5mと長く取りました。使うときに、必要な分だけ切って使えるようにするためです。
ここが大事な点で、どこで切ってもほつれません。縫い方を工夫してあるので、「少しだけ使いたい」「全部まとめて付けたい」のどちらにも対応できます。使うたびに工房へ送り直す必要はありません。
2通りの付け方ができます
クリップを縫い付ける
市販のエクステ用クリップを縫い付ければ、付け外しが簡単になります。普段使いに向いています。
両脇の糸で結びつける
両脇に20cmずつ長めに糸を残してあります。結んだ髪やお団子に巻き付けて、この糸で留められます。クリップを付けずに使いたいときや、ウィッグの上から足したいときに便利です。
髪は、取っておけます
治療で髪を失うと分かったとき、多くの方は「ウィッグをどうするか」を考えます。それは必要な準備です。
ただ、それとは別に、いまある髪をどうするかという選択もあります。切った髪は、そのままでは保管しているうちに散らばってしまいます。形にしておけば、取っておけます。
今回はエクステでしたが、ヘアシートや付け毛にすることもできます。量が少なくても、作れるものはあります。
治療が始まってからでは間に合いません。切る前に、一度ご相談ください。どのくらいの長さで切ればいいか、どれだけの量が必要かをお伝えできます。
費用については費用・料金についてをご覧ください。髪の送り方は自毛のカット方法と送り方にまとめてあります。
自毛(地毛)かつらウィッグ製作専門工房
店長 野沢昊未(のざわ ひろみ)
電話 0296-28-5097
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